《 なるほど数学コラム:高校編 1》 『 実体のある “0(ゼロ)” ~ k=0 の Σ計算 』
今回は、間違えやすい数列の計算について一緒に考えてみましょう。
キーワードは、『実体のある“0(ゼロ)”』です。別名『0番線のメソッド(方法)』です。
どんなものか、みてみましょう。
間違えやすいΣの計算問題の一例をあげます。
「こんなの簡単ですよ!」って言って、こんな計算をしないでくださいね。
これは間違いです。
この計算、左半分は合っています。この公式を当てはめようとしていると思います。
この公式の左辺は、「kの2乗で表される式にk=1,2,3,…,nを代入していき、それらを全て足し合わせる」という意味です。これをΣを使わずに書けば、次のようになります。
同様に、k=0で始まる場合もΣを使わずに書いてみます。0の2乗は0なので無視すると、k=0で始まる式は、k=1で始まる式とイコールの関係になります。
したがって、間違いの例の1/6の項は正しかったと言えます。とはいえ、これは、たまたま正しかっただけということもできます。
次に、間違いの例の右半分です。これは、以下の公式を当てはめてしまったといえます。
この公式の左辺は、「1番目からn番目まで1で表される数列をすべて足し合わせる」という意味です。つまり、1が全部でn個あるので、その総和がnなのです。
この公式のk=1がk=0に変わったらどうでしょうか?
k=1で始まる公式に『 0番目の1 』が加わるので、上のように書き換えました。この結果から、k=0で始まる式と、k=1で始まる式とはイコールの関係にはならないことが分かります。
この説明で、納得できない生徒さんが出てきます。
「 『 0番目の1 』って なに ??????!!!!!!!!!! 」
「 『 0 』ってことは、なにもないことじゃないの ?????? 」
「 なのに、『 0番目 』に『 1 』があるってどういうこと ?????? 」
言いたいことはわかりますよ。
ここで登場するのが、『実体のある“0(ゼロ)”』という概念です。
要は、「 『 0番目 』に『 1 』という『実体』がある 」という考え方です。
実際に、この世の中には、「 『実体』がある『 0 』 」というものが存在します。
一例をあげてみましょう。
みなさんは、電車に乗ったことがありますか?
電車に乗るときには、駅のホームから電車に乗ります。
駅のホームには、番号がふられています。
普通は、1番線,2番線 ・・・というふうになっています。
これは、1番目のホーム,2番目のホーム,・・・という意味です。
しかし、駅のホームを作る都合上、1番線・2番線・・・の前に番号をふる必要が生じたホームが存在します。
そのホームには、 『 0番線 』 という番号がふられます。
これは、 『 0番目のホーム 』 という意味になります。
これはすなわち、「 『 0番目 』に『 ホーム 』という『実体』がある 」ということになります。
納得できたら、正解を見てみましょう。
こうなります。
『実体のある“0(ゼロ)”』 ,『 0番目の1 』 という考え方をしっかりと身に付けて、正確な k=0 の Σ計算をしていきましょう。