《 なるほど数学コラム:高校編 5》 『 積→和, 和→積 の公式は “ 導く!” 』
今回は、「覚えにくい…」と言われている、
「三角関数」 の 『 積→和,和→積 』 の公式の導き方
について一緒に考えてみましょう。
積→和の公式、和→積の公式 は、
覚えるのではなく導けるようになる方がいい です。
なぜなら、『 積→和,和→積 』の公式 は、三角関数の公式のなかでも恐らく最も複雑な上、公式が8つもあって種類が多いので、正確に暗記してしまうのに労力がかかりますし、また、語呂合わせでの暗記もなくはないのですが、なんとなく、いまひとつ感が否めません。 加えて、そのような複雑な公式なので、試験中など重要な時に符号や順番などを「ド忘れ」してしまうと、その問題が解けないだけでなく、焦ってしまい、それ以外の問題にも影響してしまったりすることがあるからです。
もちろん、それでも「公式を導くなんてイヤだ!覚えて暗記したい!」というのであれば、語呂合わせを調べて覚えてください。
それも一つの方法ですから。
ネットで検索するといくつか出てきますよ。
それでは、いってみましょう。
まず大前提として、『 加法定理 』 は、完全・確実に覚えていてくださいね。
「えっ『加法定理』…、まだ…おぼえていない…」
っていうキミ、
今すぐ『確実に』 覚えてください。『 加法定理 』は三角関数の基本中の基本ですから。
それではあらためていってみましょう。
まずは、加法定理から積和の公式を導き出します。
《 加法定理 → 積和公式 》
sin(α+β) = sinαcosβ + cosαsinβ ・・・①
sin(α-β) = sinαcosβ – cosαsinβ ・・・②
cos(α+β) = cosαcosβ – sinαsinβ ・・・③
cos(α-β) = cosαcosβ + sinαsinβ ・・・④
①+②から
sin(α+β) + sin(α-β) = 2sinαcosβ ・・・(P)
sinαcosβ = 1/2{sin(α+β) + sin(α-β)}
①-②から
sin(α+β) – sin(α-β) = 2cosαsinβ ・・・(Q)
cosαsinβ = 1/2{sin(α+β) – sin(α-β)}
③+④から
cos(α+β) + cos(α-β) = 2cosαcosβ ・・・(R)
cosαcosβ = 1/2{cos(α+β) + cos(α-β)}
③-④から
cos(α+β) – cos(α-β) = -2sinαsinβ ・・・(S)
sinαsinβ = -1/2{cos(α+β) – cos(α-β)}
以上より、
《 積和公式 》
sinαcosβ = 1/2{sin(α+β) + sin(α-β)}
cosαsinβ = 1/2{sin(α+β) – sin(α-β)}
cosαcosβ = 1/2{cos(α+β) + cos(α-β)}
sinαsinβ = -1/2{cos(α+β) – cos(α-β)}
次に、積和の公式から和積の公式を導き出します。
《 積和公式 → 和積公式 》
α+β= A, α-β= Bとすると
α= A+B/2, β= A-B/2となり、
(P)から
sinA + sinB = 2sin(A+B/2)cos(A-B/2)
(Q)から
sinA – sinB = 2cos(A+B/2)sin(A-B/2)
(R)から
cosA + cosB = 2cos(A+B/2)cos(A-B/2)
(S)から
cosA – cosB = -2sin(A+B/2)sin(A-B/2)
以上より、
《 和積公式 》
sinA + sinB = 2sin(A+B/2)cos(A-B/2)
sinA – sinB = 2cos(A+B/2)sin(A-B/2)
cosA + cosB = 2cos(A+B/2)cos(A-B/2)
cosA – cosB = -2sin(A+B/2)sin(A-B/2)
こんな感じで、テスト中でもサッと公式を導き出すことができます。
公式を覚えようと努力するよりも、公式を導き出す練習を何度か繰り返すほうが、三角関数の演算能力も上がります。
最後に一言、「 積→和,和→積 」の公式 は、公式自体よりも「 公式をいつ使うか 」ということの方が大事になってきます。
高校生のうちは、主に 『 三角関数の微分 』 や, 『 複雑な三角方程式 』 ,『 三角関数の証明問題 』 ,『 角度に端数が現れたとき ( 例:sin15°+sin105° = 2sin60°cos45°) 』 などで使います。
もう少しだけ詳しく説明すると、『 微分 』 をはじめとする多くの計算において、積(掛け算)よりも 和・差・定数倍 となっている方が計算しやすいため、「積」の形で表された式を「和・差・定数倍」で表された式に直す場面がよくあります。
逆に、『 複雑な三角方程式 』 を解く際など、因数分解したい時においては 「和・差」 を 「積」 に直すことになります。
いずれにしても、「 積→和,和→積 」の公式 を使う問題に出会ったら、「 どのようにその公式を使うのか 」 その解法パターンや手順を、よく練習して覚えてしまうようにしましょう。
大丈夫です。
すぐに慣れますから。
「 積→和,和→積 」の公式 を “導いて” 使う問題を沢山解き、得点源にしてしまいましょう!