高校物理 ベクトル量について
物理であつかう量にはさまざまなものがあり,それらは,ベクトルとスカラーの2つの量に分けられます。ベクトルとは,大きさと向きとをあわせ持つ量であり,スカラーは大きさだけで表される量のことです。
ここでは,ベクトル量をきちんととらえ,あつかうための基本事項,注意事項をとりあげます。
具体的に速度という量を使って説明しましょう。
「東向きに5m/s」などと表されるのが速度です。
このときの「東向き」は向き,「5m/s」が大きさということになります。
(速度の大きさのことを「速さ」といいます。)
速度は大きさと向きをあわせもつ量,ベクトルなのです。
物理量を表す式や言葉を見たときあるいは聞いたとき,それがベクトルかスカラ―か判別できるようになるとよいでしょう。大きさだけでなく,向きをもつ量なのか?というところがポイントですね。
次に,公式を使うなどして,ベクトルで式をつくり計算する際に注意してほしい点です。
ベクトル量の関係などを表す公式は一般にベクトルを使って表されます。
例えば,合成速度v=v1+v2,相対速度vAB=vB-vAの公式にふくまれるvは速度です。
v,v1,v2,vAB,vA,vBはすべて向きをもつベクトルだということです。代入するときは速さではなく速度を代入しなければならないというところが大事です。
(1)物体が一直線上を運動する場合
物体の速度の向きには2つの向きしかないため,速度の向きを正か負かで表すことができます。
2つの向きのどちらかを正の向きと決め,反対の向きを負の向きとするやり方です。これによって速度は,+5m/s,-3m/sなどと表すことができます。
このときは,例えば,合成速度ならv=+5(m/s)+(-3)(m/s)=+2(m/s)
のように計算できます。
(2)平面上や空間内を物体が運動する場合
その速度は,(+5m/s,-3m/sのように数値で表すことができないため)「有向線分」として考えます。速度の向きを有向線分の向き,速度の大きさを有向線分の長さに対応させたものにします。
この場合も公式どおりの計算をすればよいのですが,有向線分どうしの計算となるため,速度の有向線分を図示して,求めたいベクトルを作図して求めるようになるのが一般的です。
今回は速度を使って説明しましたが,他のベクトル量でも同様です。
以上のようなことをふまえて物理の学習に取り組んでみましょう。
専属教師 杉山 広徳